ウラッハのモーツァルト五重奏曲

私の大好きな名盤・その6

モーツァルトのクラリネット五重奏曲
演奏:クラリネット/レオポルド・ウラッハ、ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団、録音:1951年

高校生の頃から大好きな室内楽曲のひとつだったのがこの曲で、LP・CDを通じてこの演奏を決定盤として愛聴している。こんなに上質な演奏は今後二度と出現しないのではないか。ふくよかで上品で愉悦の極みに浸れる演奏という点で稀有の存在だ。クラリネットの音色のなんとやわらかで温かいことか。夢見るような甘い高音から安らぎの気持ちにいざなう低音域まで、うっとりと聴き入ってしまう滋味豊かな表現だ。

第2楽章では クラリネットと第1ヴァイオリンとのかけあいが あたかも恋人同士の密な交歓のひとときを想像させる夢心地へと導いてくれる。


第3楽章はA-B-A-C-Aの複合三部形式だが、Bの弦4部だけでの合奏はクラリネットが混ざった時との対比が際立って美しく、哀感いっぱいの演奏が際立つ印象的な部分だ。そしてなんといっても C こそこの演奏の白眉だ。ほかの奏者を雲泥の差で凌駕している。クラリネットをここまで幅広い表情で表現した演奏は今後現れないだろう。


第4楽章のテンポを上げて爆発的に喜ばしく歌い上げる部分でも、決して優雅さを失わない畢生の名演だ。

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